毎日コーヒーを飲んだ後に出る「コーヒーがら」、いつも捨ててしまっていませんか?このコーヒーがらは再利用でき、ガーデニングや家庭菜園で役立つ土壌改良材や肥料として注目されています。
しかし、ただ土に混ぜるだけでは逆効果になることも。この記事ではコーヒーがら肥料が持つ本当の効果から、知っておくべきデメリットまで詳しく解説します。
正しい作り方はもちろん、庭にまく・畑にまく際の具体的な注意点、湿気によって発生しやすい青カビへの対策、さらに意外な虫除けとしての活用法まで解説します。
- コーヒーがら肥料のメリットとデメリット
- 正しいコーヒーがら肥料の作り方
- 庭や畑での具体的な使い方
- カビや害虫トラブルへの対処法
話題のコーヒーがら肥料!その基本と効果

- コーヒーかすの再利用が注目される理由
- 土壌改良などコーヒーかすの驚くべき効果
- 知っておくべきコーヒーかす肥料のデメリット
- そのまま使うと窒素飢餓を招く可能性も
コーヒーかすの再利用が注目される理由

近年、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まる中、家庭から出るごみを減らし、資源として活用する動きが活発になっています。その中で特に注目されているのが、コーヒーを抽出した後に残る「かす」の再利用です。
これまで多くは廃棄されていましたが、実は様々な有効活用の可能性があることが分かってきました。全日本コーヒー協会では、この抽出後のコーヒー粉を「コーヒーグラウンズ」と呼び、価値ある資源としての活用を推進しています。
家庭で手軽に始められるエコ活動として、またガーデニングや家庭菜園を豊かにするアイテムとして、コーヒーかすの再利用は多くの人にとって魅力的な選択肢となっています。美味しくコーヒーを楽しんだ後、その「がら」を捨てるのではなく、もう一度活躍させてみませんか。
飲み終わった後のコーヒーかすが、ただのゴミではなく価値ある資源に変わるというのは素晴らしいことですね!
土壌改良などコーヒーかすの驚くべき効果

コーヒーかすが肥料として優れている最大の理由は、その土壌改良効果にあります。コーヒー豆は、焙煎・粉砕されることで、表面に無数の小さな穴が開いた「多孔質(たこうしつ)」という構造になります。この構造が土壌に多くのメリットをもたらすのです。
主な効果一覧
- 通気性と排水性の向上:
土に混ぜ込むことで隙間が生まれ、空気や水の通り道が確保されます。これにより、根が呼吸しやすくなり、根腐れの防止につながります。 - 微生物の活性化:
多孔質な構造は、土壌中の有用な微生物にとって格好の住処となります。微生物が活発に活動することで、土がふかふかになり、植物が育ちやすい環境が整います。 - 栄養素の供給:
コーヒーかすには、植物の三大栄養素である窒素・リン酸・カリウムが含まれています。特に窒素は、葉や茎の成長を助ける重要な成分です。 - 酸性土壌の維持:
コーヒーかすは弱酸性です。そのため、アジサイ、ブルーベリー、シャクナゲといった酸性の土壌を好む植物にとっては、非常に良い肥料となります。 - 消臭効果:
多孔質な構造は臭いを吸着する性質も持っています。堆肥作りの際に混ぜ込むことで、動物性堆肥などの気になる臭いを軽減する効果も期待できます。
このように、コーヒーかすは単に栄養を与えるだけでなく、土壌そのものの物理的な性質を改善し、植物が健康に育つための土台作りを助けてくれる優れた資材と言えるでしょう。
コーヒーかすの効果まとめ
コーヒーかすは、その多孔質な構造により土の通気性や排水性を改善します。また、窒素などの栄養素を含み、特に酸性を好む植物の育成に適しています。
知っておくべきコーヒーかす肥料のデメリット

多くのメリットがある一方で、コーヒーかす肥料にはいくつかのデメリットや注意点が存在します。正しい知識を持たずに使用すると、かえって植物の生育を妨げてしまう可能性があるため、必ず理解しておきましょう。
注意!コーヒーかす肥料の主なデメリット
- 生育阻害物質:
コーヒーかすに含まれるカフェインやポリフェノール(タンニン)は、一部の植物の成長を阻害することがあります。 - 窒素飢餓:
生のコーヒーかすを土に混ぜると、分解の過程で土の中の窒素が使われてしまい、植物が利用できる窒素が不足する「窒素飢餓」を引き起こすことがあります。 - カビの発生:
湿ったままのコーヒーかすを土に撒くと、カビが繁殖する原因になります。特に、風通しの悪い場所では注意が必要です。 - 土壌の酸性化:
酸性を好む植物には良いですが、アルカリ性や中性の土壌を好む植物にとっては、土が酸性に傾きすぎることが生育不良の原因になります。
これらのデメリットは、コーヒーかすを「適切に発酵・乾燥させる」ことで、そのほとんどを解消できます。特に重要なのが、次の項目で解説する「窒素飢餓」の問題です。
そのまま使うと窒素飢餓を招く可能性も

コーヒーかす肥料を使う上で、最も注意すべきなのが「窒素飢餓(ちっそきが)」という現象です。これは、植物が育つために必要な窒素が、土の中で不足してしまう状態を指します。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その鍵を握るのがC/N比(炭素率)です。
土の中の微生物は、有機物(コーヒーかすなど)を分解する際に、エネルギー源として炭素(C)を、そして自身の体を作るために窒素(N)を必要とします。コーヒーかすは炭素を多く含んでいるのに対し、微生物がすぐに利用できる形の窒素は少ないという特徴があります。
このため、未発酵のコーヒーかすを土に投入すると、微生物がそれを分解しようと活発になりますが、窒素が足りないため、土壌にもともと存在していた窒素を奪って消費してしまうのです。その結果、植物が吸収すべき窒素がなくなり、葉が黄色くなるなどの生育不良を引き起こします。
窒素飢餓を防ぐには「発酵」が不可欠
この問題を解決する唯一の方法が、使用前にコーヒーかすを堆肥化(発酵)させることです。腐葉土や米ぬかなど窒素分が豊富な資材と一緒に発酵させることで、微生物が利用しやすい形の窒素が作られ、植物にとって安全で良質な肥料に生まれ変わります。
「体に良いから」といってサプリメントを過剰に摂取すると健康を害するのと同じように、コーヒーかすも正しい手順を踏まずに与えると、植物にとって「毒」になりかねません。必ず、発酵させてから使用することを徹底してください。
コーヒーがら肥料を正しく使うための実践ガイド

- 発酵が重要!コーヒーかす肥料の作り方
- 庭にまく際の適切な量と注意点
- 畑にまく場合は土壌への影響を考慮
- コーヒーかすは虫除けにもなる?
- 湿気は危険!青カビを発生させないコツ
- 正しく学んでコーヒーがら肥料を活用しよう
発酵が重要!コーヒーかす肥料の作り方

コーヒーかすを安全で効果的な肥料にするためには、前述の通り「発酵」のプロセスが欠かせません。ここでは、家庭で手軽にできる基本的なコーヒーかす堆肥の作り方をご紹介します。
ステップ1:乾燥させる
まず、抽出後の濡れたコーヒーかすをしっかりと乾燥させます。これはカビの発生を防ぐための重要な工程です。
- 天日干し:
新聞紙やトレーに薄く広げ、風通しの良い場所で数日間乾燥させます。時々かき混ぜると早く乾きます。 - フライパン:
弱火で焦がさないように注意しながら、サラサラになるまでゆっくりと煎ります。 - 電子レンジ:
耐熱皿に広げ、数十秒ずつ様子を見ながら加熱とかき混ぜを繰り返します。レンジ内の消臭もできて一石二鳥です。
ステップ2:材料を混ぜて発酵させる
乾燥させたコーヒーかすと、発酵を助ける他の有機物を混ぜ合わせます。段ボールコンポストを利用するのが手軽でおすすめです。
段ボールコンポストの作り方(一例)
- 丈夫な段ボールを用意し、底や隙間をガムテープで補強します。
- 段ボールの中に腐葉土と乾燥コーヒーかすを「腐葉土7:コーヒーかす3」程度の割合で入れ、よく混ぜ合わせます。
- 発酵を促進するために、米ぬかや油かすを少し加えるとより効果的です。
- 全体が少し湿る程度に水を加え、軽くかき混ぜます。ヨーグルトや納豆の容器をすすいだ水を入れると、乳酸菌や納豆菌が発酵を助けてくれます。
- 虫や雨が入らないよう、通気性のある布(古いタオルなど)で蓋をし、風通しの良い場所に置きます。
ステップ3:管理と熟成
発酵を均一に進めるため、1日に1回程度、スコップなどで全体をかき混ぜて空気を取り込みます。数日〜数週間して、中がじんわりと温かくなってきたら、発酵が順調に進んでいる証拠です。
新しいコーヒーかすを追加することも可能ですが、その都度よく乾燥させてから加え、しっかりとかき混ぜてください。
全体の量が段ボールの8割程度になったら投入を中止し、その後も週に1〜2回かき混ぜながら、1ヶ月〜3ヶ月ほど熟成させます。サラサラとした黒い土のようになり、甘酸っぱい匂いがしてきたら、良質なコーヒーかす堆肥の完成です。
庭にまく際の適切な量と注意点

完成したコーヒーかす肥料は、庭の様々な場所で活用できます。ただし、使い方にはいくつかのポイントがあります。
土壌改良材として
植物を植える前に、庭の土に1〜2割程度のコーヒーかす肥料を混ぜ込みます。これにより、土の通気性や保水性が高まり、植物が根を張りやすい環境を作ることができます。
追肥として
すでに育っている植物の株元に、少量(一握り程度)をパラパラと撒き、土の表面と軽く混ぜ合わせます。特に、アジサイやブルーベリーなど酸性を好む植物には効果的です。ただし、やりすぎは土壌バランスを崩す原因になるため、様子を見ながら少しずつ与えましょう。
マルチング材として
マルチングとは、植物の株元を覆うことです。乾燥させたコーヒーかす(発酵させていないものでも可)を土の表面に1cm程度の厚さで敷き詰めると、以下の効果が期待できます。
- 雑草抑制:光を遮ることで、雑草の発生を抑えます。
- 保湿効果:土の水分蒸発を防ぎ、夏場の水やりの手間を軽減します。
- 泥はね防止:雨による泥はねを防ぎ、病気の予防につながります。
マルチングの注意点
マルチングに未発酵のコーヒーかすを使う場合、土に混ぜ込まないように注意してください。あくまでも土の表面を覆う資材として使用します。また、厚く敷きすぎると通気性が悪くなることがあるので注意が必要です。
畑にまく場合は土壌への影響を考慮

家庭菜園や本格的な畑でコーヒーかすを利用する場合、より長期的な視点で土壌への影響を考える必要があります。
UCC上島珈琲株式会社と近畿大学農学部の共同研究では、コーヒーかすの農業利用について興味深い結果が報告されています。
研究でわかったコーヒーかすの効果
コムギとダイズの二毛作圃場において、作物の発芽後にコーヒーかすを土壌の表面に施用(マルチング)する実験を行った結果、以下のような効果が確認されました。
- 初年度の影響:
施用した初年度は、作物の生育がやや抑制される傾向が見られました。これは、コーヒーかすに含まれる生育阻害物質の影響と考えられます。 - 2年目以降の効果:
継続的に施用した2年目以降は、生育阻害の影響は見られなくなり、むしろ土壌中の炭素量や窒素量が増加し、土壌改良効果が確認されました。 - 雑草抑制効果:
1平方メートルあたり10kgのコーヒーかすを施用した区画では、雑草の量が50%以上減少するという顕著な雑草防除効果が見られました。
この研究から、畑でコーヒーかすを利用する際は、すぐに肥料としての効果を期待するのではなく、長期的な土壌改良や雑草抑制を目的として活用するのが有効であると言えます。特に、栽培開始の数ヶ月前から土にすき込んでおくことで、生育阻害のリスクを減らし、土壌を豊かな状態にすることができます。
コーヒーかすは虫除けにもなる?

コーヒーかすは、肥料や土壌改良だけでなく、一部の害虫を遠ざける効果も期待できると言われています。その理由は、コーヒー特有の香りと成分にあります。
多くの昆虫は嗅覚が発達しており、特定の香りを嫌う習性があります。コーヒーかすに含まれるカフェインや独特の香りは、以下のような虫に対して忌避効果があるとされています。
- アリ
- ナメクジ、カタツムリ
- 蚊
- 一部の甲虫類
具体的な使い方
- 撒く:しっかりと乾燥させたコーヒーかすを、虫の侵入経路になりそうな玄関先や、ナメクジなどが出やすい植物の株元にパラパラと撒いておきます。
- 煙でいぶす:耐熱皿に乾燥したコーヒーかすを盛り、線香のように火をつけます。立ち上る煙には蚊などを遠ざける効果があり、天然の蚊取り線香として利用できます。
化学的な殺虫剤を使いたくない場所での虫除け対策として、試してみる価値はありそうですね!ただし、すべての虫に効果があるわけではないので、あくまで補助的な対策と考えるのが良いでしょう。
また、コーヒーかすの香りは猫よけにもなると言われており、庭への糞尿被害に悩んでいる場合に試してみるのも一つの方法です。
湿気は危険!青カビを発生させないコツ

コーヒーかすを利用する上で、最もよくある失敗が「カビ」の発生です。特に、青や白のカビが生えやすいですが、これはコーヒーかすに残った水分と養分が原因です。
カビの発生を防ぐための最大のコツは、使用前に徹底的に乾燥させることに尽きます。
乾燥を徹底するためのポイント
- 薄く広げる:
天日干しでもレンジでも、コーヒーかすを厚く重ねず、必ず薄く平らに広げてください。塊になっていると中まで乾きません。 - こまめにかき混ぜる:
乾燥中は時々かき混ぜて、全体の水分が均一に飛ぶようにします。 - 湿度の高い日を避ける:
梅雨の時期など、湿度が高い日に天日干しをすると、乾く前にカビが生えてしまうことがあります。天気の良い日を選ぶか、フライパンやレンジを活用しましょう。
もしカビが生えてしまったら?
万が一、保管中にカビが生えてしまっても、すぐに捨てる必要はありません。カビも微生物の一種です。前述した堆肥作りのプロセスに投入すれば、他の有用な微生物の力で分解されてしまいます。土の中にいる多様な菌が、特定のカビ菌よりも優勢になるため、最終的には問題なく良質な堆肥として利用できます。
ただし、植物に直接撒くのは避けるべきです。カビが生えた場合は、必ず堆肥化の材料として利用するようにしてください。
正しく学んでコーヒーがら肥料を活用しよう
この記事では、コーヒーがらを肥料として活用するための様々な情報をお届けしました。最後に、重要なポイントをリストでまとめます。
- コーヒーがらは「コーヒーグラウンズ」とも呼ばれる価値ある資源
- 多孔質な構造が土の通気性や排水性を良くする
- 窒素・リン酸・カリウムなどの栄養素を含む
- アジサイなど酸性を好む植物と相性が良い
- デメリットとして生育阻害や窒素飢餓の可能性がある
- 窒素飢餓は未発酵のかすを土に入れると起こる
- デメリット解消には「発酵」させて堆肥化することが不可欠
- 肥料の作り方は「乾燥」「混合・発酵」「熟成」の3ステップ
- 段ボールコンポストなら家庭でも手軽に作れる
- 庭では土壌改良や追肥、マルチングに使える
- 畑では長期的な土壌改良と雑草抑制効果が期待できる
- アリやナメクジなど一部の虫除け効果もある
- カビ防止には使用前の完全な乾燥が最も重要
- もしカビが生えても堆肥にすれば再利用可能
- 正しい知識を身につければ、コーヒーがらは最高のサステナブル資材になる